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大阪家庭裁判所 昭和35年(家イ)1927号 審判 1961年1月18日

申立人 秋山イネ(仮名)

相手方 吉元多助(仮名) 外一名

主文

相手方両名は連帯して申立人に対し金一五〇、〇〇〇円を支払え。

理由

申立人は、相手方両名に対する預け金二五〇、〇〇〇円の返還請求につき調停の申立をなした。

双方の陳述した事実の要旨は、申立人は相手方和枝の叔母であり、相手方多助は相手方和枝の夫であるところ、申立人は昭和三十四年六月二十四日より同三十五年四月十九日まで相手方住居に寄寓していたが、その寄寓に際しバラツク建の小室を設ける費用として金一五〇、〇〇〇円を相手方和枝に交付し、相手方和枝はその建策費として金一二〇、〇〇〇円を使用して残額金三〇、〇〇〇円を預つたままになつている。又申立人は、昭和三十四年八月頃さきに協和銀行難波支店にしていて満期になつた定期預金三〇〇、〇〇〇円を継続預金する際、相手方和枝の要求で内金一五〇、〇〇〇円を相手方等に預けることとし相手方多助名義の定期預金(満期昭和三十五年八月末日)となしてその証書を相手方和枝に交付した。ところが申立人は昭和三十五年四月十九日相手方家族の冷遇に堪え兼ねて同家から退去したので、頼りの金である上記相手方に預けた定期預金の一五〇、〇〇〇円と建築費用として出した金一五〇、〇〇〇円との合計金より寄遇中の申立人の生活費として金五〇、〇〇〇円を差引き、残額金二五〇、〇〇〇円の返還を求めると云うのであつて、相手方は定期預金一五〇、〇〇〇円の返還義務は認めるが、子女の教養及び相手方多助死亡の際の葬式費として今暫く預つて置きたいと述べ、即時の返還には応じないので調停が成立するに至らない。

当裁判所は、調停委員の意見を聴き、衡平に考慮し、上記事実その他一切の事情を観て、事件解決のため、上記定期預金一五〇、〇〇〇円を相手方両名をして連帯して申立人に返還せしめるを相当と認め、家事審判法第二十四条によつて主文のとおり審判する。

(家事審判官 谷村経頼)

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